2006-07-29

LAの若者達が訪タイ

ロサンゼルスに暮らしているタイ人の若者の集団が訪タイ、文化センターにやってきて交換演奏会をした。

白い服がその子供達。見た感じ、ほとんど皆タイ語も普通に喋るし、ハーフもほとんど居ないので普通のタイの若者と見分けがつかない。もちろん普通のタイ人と違って流暢に英語を喋るけど。

ロサンゼルスにはタイ式の寺が有って、そこで音楽や舞踊を習っているそうだ。でもタイ中央楽器だけのようで、イサーン楽器は見当たらない。

相変わらず我々の出番は最後。司会業が大好きな師匠はさっそく彼らにケーンの腰振りネタをやらせていた。子供もアメリカで育つとノリが良いというか、自ら進んで笑いを取っていた。

最後の方で若者達と一緒に来た年配の方達が踊りの衣装と化粧で出てきてちょっとビビった。今まであの衣装と化粧は25歳ぐらいまでの人しか見たことが無かったので。

文化センターの音楽部門はこの日で前期の学期が終了となり、来週から二週間お休み。その後、後半の学期が始まります。

2006-07-22

コンテスト続き

そんなわけで音響が悪くて頭が痛くなる屋内会場から出たり入ったりを繰り返していたけれど、そのうちに外の通路で小モーラム大会みたいになって、これはこれで面白かった。なぜか酒も有るし。

会場の外で盛り上がる我々に飛び入りしてきたのは、前回マハサラカムのケーン楽団宿舎でN先生にレクチャーしていた人。自分は大先生だと思っていたんだけど、N先生によると、「そんなたいした人じゃないよ」だそうだ。よくわからない。

ビデオ(1.3MB) 飛び入りで歌う大先生(だと自分が思っていた人)。

N先生の仲間全員の出番が終わったら庭に出てまったり。出場者の中に、N先生がとても気になったおじいちゃんが居たらしく、連れ出してきて演奏してもらったりした。

ケーンの世界はとても年齢層が広い。今回のコンテストでは若者も居るけれど、おそらく大半は40代以上。60代以上だってばりばり現役なのが当たり前で、30代は若造といったところか。

そんなわけで若いプレーヤーは高齢のベテランとはすぐ仲良くなって教えを請うのがごく自然な行為のようだ。

コンテストの結果は、N先生と友達はあえなく落選して、写真左の後輩(18歳)が2位を取った。この18歳はめっちゃうまい。関係無いけど彼の綿のイサーン風のシャツが気に入ったのでどこで買ったら聞いたら、「おかあさんが作った」そうだ。

優勝した人はどんな演奏だったのか、会場から出たり入ったりしていた上に大勢居すぎてわからなくなってしまった。最後に演奏してくれればよかったのに。

全て終了した後、審査員の一人として来ていたモーケーン、ブアホーン・パーチャヲン*さんがリクエストに答えて吹きまくり。

実物に会ってみると…なんだか賢そうに見えない人だ(笑。けど、演奏は当然凄い。

*ブアホーン・パーチャヲン: 1998年度(たぶん)のタイ王国ケーン・チャンピオン。自分はケーンを習い始めた頃にこの人のCDを買ったけれど、どうしてケーンでこんな音が出るのか全く理解できなかった。

朝8時に入った会場を後にしたのは夜8時。主催側の人の車でマハサラカムまで送ってもらうことに。なんと人間国宝プルアンさんと一緒。昔、大阪に公演に行った話とかを聞いた。「一緒にカラシンまで行くかい?」なんて言われたけど、さすがに遠慮した。去年は言葉が全然聞き取れなかったけど、今回は理解できてよかった。去年一度お会いしていることは、プルアンさんは覚えていないだろう(たぶん)。

コンケンにてケーンとモーラムのコンテストを見学

朝3時半、コンケンのバーンパイで降ろしてもらい、N先輩の友達の家で休憩。朝7時半までぐっすり眠ってコンテスト会場へ。

会場はラムカムヘン大学の中だった。コンケンにもラムカムヘン大学があるとは今まで知らなかった。

開会式のあと、ケーンは屋内へ。屋外はモーラムのコンテスト、屋内はケーンと分かれて同時進行する。

こちらはケーンの屋内会場。

よく見たら審査委員長はポンラン人間国宝のプルアンさんじゃないですか。去年のポンランサオーンのコンサートの時、舞台裏の喫煙所でこの方に話し掛けられたけれど、そんな偉い人とは知らない自分は「何言ってるのかわかんないよ」と言ってしまった、あのお爺ちゃん。やべーこっち見てるよ、と一人で焦る。

ケーンコンテストの参加者は34人。ルールは各自がスッサネーン、ライヤイ、好きなもの何でも、の三つを各5分ずつ、合計15分演奏すること。

しかし始まってすぐ思ったのは、これは音響が酷い。音が悪い上に拡声し過ぎで、聞いているうちに頭が痛くなってきた。全部聞きたいのはやまやまだけど、ぶっ続けで聞くことは不可能な程だったので、ちょくちょく外に退避。そう感じたのは皆同じのようで、N先生のグループは出番待ちの間に外で誰かが持ってきた酒を飲みつつ歌ったり踊ったりしていた。

そしてこちらはモーラムの会場。

モーラムコンテストの審査委員長は、先日ここにコメントをくれた方が言及していたモーラム人間国宝のチャウィーワンさん。パフォーマンスもあった。

モーラム審査中のビデオ(1.3MB) 後姿がチャウィーワンさん。

2006-07-21

ナンタルン

コンケンに向かう前に、N先生に連れられてシンラパコーン大学で行われている、ロイエトのナンタルン劇団の公演会場へ。



ナンタルンとはタイの人形影絵芝居のこと。タイ南部で発生した影絵芝居はイサーン地方に伝わり、モーラムと合体して独自の芸能になった。生バンドをバックに人形とセリフによる物語をメインとして、歌や人形の踊りを加えて演出する。使う楽器は西洋式のバンド、タイの中央楽器、イサーン楽器とごっちゃ混ぜ。

イサーン語のみなので自分はいまいち理解できないけど、内容には風刺やギャグがちりばめられているらしく、観客からは「くくくっ」という洩れ笑いが終始聞こえていた。

公演が終わって舞台裏を見学。バックバンドの一人が前回マハサラカムで泊まった時に部屋を開けてくれたN先生の後輩だった。ようするに、この劇団のバスに便乗してコンケンまで行く、という趣向だったと理解。なぜかマハサラカム大学のバスで、あれれ?と思ったけど、とにかくバス代が浮いた。

コンケンへ

先々週マハサラカムへ行ったばかりだけど、今日からコンケンへ行くことになった。

明日ケーンとモーラムの大規模なコンテストが有るので、それを見に行くわけです。前回一緒に行ったN先生も出場します。

凄腕のモーケーン数十人を一日で見られるという、滅多に無い機会なので楽しみ。
07/23 訂正: 最初マハサラカムと書いたけど、コンテストが行われるのはコンケンでした。

2006-07-06

ケーンで合奏

結婚式から旧宿舎に戻った我々は、ひたすらケーンの合奏。ケーンの合奏に合う曲をいろいろ教えてもらう。どれも古風でケーン楽団に似合うメロディーだ。

そういえば普段はポンラン楽団でやっているのでケーンと太鼓だけで合奏するのはこれが初めてだったけど、とても心地良いものだと知った。


盛り上がってきたところで外に場所を移す。昔のケーン楽団の感じを出すためわざわざ服装も古風にする。といっても単に裸にパーカオマーを巻いただけだけど。

2時間ぐらいやったら疲れたので昼寝。夕方N先生と自分はバンコクへ向かった。

今回はほぼ全ての目的を果たせた上に、いろいろ貴重な体験をさせてもらった。マハサラカムには、また来ることもあると思う。

ケーンで合奏 (mp3,0.6MB) 曲名は聞き忘れたけど、かなり昔の歌で歌詞もあるらしい。

2006-07-05

イサーン式結婚式

翌日はN先輩の友達の結婚式へ。

イサーン地方の伝統的な結婚式のスタイルで、新郎は奇声を上げたり踊ったりする人々の行列と共に花嫁の家にやってくる。行列はケーンや太鼓等の楽器とモーラムが先導し、布団と枕を運んで来る習わしとなっている。


花嫁の家に到着した我々は花嫁の家の前で演奏を続ける。

伝統としては、花婿は家の中に入り、しばらくは花嫁の家族と一緒に暮らすことになっている。

花嫁の家の前にはこじんまりとしたモーラムのステージ。結婚式にモーラム団を呼ぶのも割と一般的な風習で、盛り上がってきたら来客はステージの前で踊る。

その舞台の上でモーラムの伴奏をする花婿。花婿はN先生と同じく、元ケーン楽団の団員なのであった。

その後数時間飲み食いして帰った。飲み食いして踊って、と全く肩のこらないイサーン式の結婚式は良い風習だと思う。

せっかくなので記念に日本語で記帳しておいた。

ビデオ(1.2MB) 花婿の行列。

2006-07-04

ちょっと観光

夕方、マハサラカム大学に戻り、旧キャンパス内の「東北地方文化芸術研究所」を見学。

一階から三階まで、イサーン地方の楽器や生活用品がたくさん展示してある。図書館や資料室も充実しているようだ。

そして新キャンパス方面にある「マハサラカム大学博物館」へ、N先生の後輩に連れて行ってもらう。

昔のイサーン地方の建物を再現した村のような形をしている。昔を再現と言っても、イサーン地方では今でもこういう建物は普通に見られる気もする。ここではイサーン舞踊を披露する機会も頻繁にあるそうで、学生達が打ち合わせをしていた。

自分を連れてきたN先生の後輩は、後輩達に「日本に十年間行ってきてタイ語忘れちゃった先輩だ、みんな挨拶しなさい」などと紹介していた。そんな嘘を学生達は普通に信じていたようなので、否定はしないことにした。

その後は新キャンパスの宿舎で夜中まで酒盛りをして寝た。N先生の後輩が自分が寝る為にわざわざ部屋を空けてくれた。ありがたい。

ロイエトのケーン職人

午後はケーン職人に自分達のケーンの調整してもらう為、隣接県のロイエトに向かう。

ケーン職人のブアさんはタマリンド作りの農業と兼業で、自分達が到着したと聞いて畑から帰ってきた。ケーンの生産に専念するのは主に夏、それ以外は畑仕事が主だそうだ。

この村には、既に亡くなったけれど高名なケーン職人が居て、高齢になってからその技術を称えて国からドクターを授与された。ブアさんはその弟子である。

しかしケーンのリード調整は複雑な職人技で、見ていてもさっぱりわからない。

いまさら知ったのは、技術がなければ自分でリードを掃除するのは厳禁だということ。まれにリードが周りの板とくっついたりすることが有るけれど、そのような場合は振動や強い息だけで直す。それで直らなければ職人に直してもらうとのこと。

一通り調整が終わってから、N先生はブアさんにピーを一本作ってもらう。

ピー( ปี่ )とは笛のことだけど、イサーン地方のこの笛はリードにケーンと同じ物を使っていて、なんとも古めかしい微妙にゆらぐ音がする。ものの15分ぐらいで一本できてしまった。

その後は近所のブアさんの亡き師匠の家を訪問して奥さんに会い、マハサラカムに戻る。

モーケーンのレクチャー

朝9時前、宿舎に年配のモーケーンが来た。

早朝からわざわざ来たのは、N先生にレクチャーする為。かつてはソムバット・チムラート*の師匠でもあったという、いわゆる大先生。名前は聞き忘れたけど、たぶん有名な人なのだろうと思う。

ケーン本来の伝統的な奏法を一通り見せて、ポンラン等の影響を受けた現代の奏法との違いなどを説明していた。高齢ながら呼吸に乱れが無い。全ての内容は聞き取れないが自分も横で聞かせてもらった。
ソムバット・チムラートはタイでもおそらく最も有名なモーケーンの一人。盲目のモーケーンとしても有名。
CDもいくつか出ていて自分もよく聞くけれど、その演奏、特にスッサネーンなどはあまりにも速過ぎて、プレーヤの再生速度を数割落として聞いても丁度良いくらい。ある意味行くところまで行ってしまった演奏家という感じ。

マハサラカムにて

先週立てた予定通り、ケーン演奏家のN先生と一緒に21:00バンコク発の夜行バスでマハサラカムのバスターミナルに朝5時到着、ソンテウが動き出すのを待ってマハサラカム大学に向かう。

朝6時マハサラカム大学に到着。キャンパスは広大で、なんだか森の中に建物が点在しているような感じ。ところがここは旧キャンパスで、これ以上拡張できない為、数キロ先の更に広大な土地に次々と大きな校舎を建造中という。後で新キャンパスを見たけれど、人工都市を一つ作り上げるような規模で道路や建物を建設中だった。

森の中の小道を歩くこと十分ほどでケーン楽団の宿舎に到着。

いわゆる旧宿舎だそうで、まるでボロボロの廃屋のようだが、入り口には「地方音楽舞踊」の看板、そして玄関には「ケーン楽団」の文字が。

N先生は学生時代、この宿舎で5年以上生活したそうだが、現在はここに宿泊している学生は少数で、ほとんどの学生は新キャンパスの宿舎に居るそうだ。


中は意外と広く、宿泊用の部屋も有り。到着した時はN先生の後輩の学生が蚊帳の中で寝ていた。森の中なので空気も雰囲気も良いが、窓や玄関は密閉できないため、ここで寝るには蚊帳が必須。また雨季は洪水になることも有り、膝上まで浸水したことも有って大変だったそうだ。

到着したら次から次へといろんな人が挨拶に来た。以前、数週間の間タイ文化センターに実習で教えに来ていた人達も何人か居て懐かしい。

この宿舎にやってくる人は誰もがイサーン音楽に関わりのある人達ばかり。

ビデオ(0.8MB) N先生の伴奏でモーラムを歌う後輩。

2006-07-02

イサーン楽器の産地訪問へ

かねてから行ってみたかったイサーン楽器の産地。先週ケーン演奏家のN先生からロイエトのケーン職人を紹介してもらったので7月中に一人で行こうかと思っていたところ、ご本人も行くところだということで明日から一緒に行くことになった。

予定としては月曜の夜行バスでN先生の出身のマハサラカムの大学へ火曜日到着、マハサラカムの大学はイサーン音楽と舞踊が盛んだそうです。その後ロイエトのケーン職人のいる町へ、どうやら職人さんの家にホームステイすることになりそう。そこの産地には歴史的にも高名な職人が居たのだけどもう死んでしまって、今はそのお弟子さんがケーンを作っているそうだ。楽しみです。

前回ロイエトに行ったのは4年以上前かな、コンケンからウボンまで、あちこちの町に泊まりながらバスで旅行をした時。当時はタイ語もまったく喋れず、一人でちょっと冒険的な旅行でした。結局何も問題は無かったけど、旅行中英語を喋る人はロイエトで会った警官一人だけ、カラシンとかでは地図も手に入らず、ちょっと苦労した覚えがあります。

明日ご一緒するN先生は来月ケーンのコンテストに出るそうで、こっそり一人で練習してたのでビデオ撮っちゃいました。

N先生の動画(1MB) (例によって30秒しか撮れない)