曲の構成の単純さ
通常ポンラン楽団の演奏は舞踊とセットになっているので、演奏は踊りの構成に沿ったものになります。例えばプータイ・サームパオ(プータイ3民族)の演奏なら、最初にサコンナコンのプータイ族を代表する旋律(もちろんポンラン楽団向けにアレンジされていますが)でその民族衣装と踊りが見られ、次はカラシンのプータイの旋律と舞踊で同様に、そしてナコーンパノムで同様に、という三部構成になっています。そしてその演奏内容は、一部ごとに一つのテーマが延々と繰り返されるだけですから、聞いている人は各部が終わる頃にはその旋律を覚えてしまっていることでしょう。合奏法の単純さ
ピン、ケーン、ポンラン、ウォート等の楽器がほとんどユニゾンで演奏するので、テーマが伝わりやすい。もちろん同じテーマでもそれぞれの楽器に独特の味付けが有りますから、まったく一致するわけでは有りませんし、ケーンは旋律と同時に和音でリズムを刻みますからバッキングのような役目もあります。それでもこれらの楽器が同一テーマを同時に演奏するので聞く人がテーマを理解するのがとても楽になります。コードの単純さ
本来の土地の音楽には西洋音楽でいうコードという考え方は無いんですが、現代のポンラン楽団はベースギターを入れるのが主流です。そしてベースが入ると自然と西洋のコード進行の概念が入ってきます。つまりイサーン楽器の楽団にベースが入った時点で、既にイサーン音楽と西洋音楽の概念が合体している、と言って良いと思っています。しかし使われるコード進行は非常に単純で、そのベースラインも大抵はルートと五度だけです。これがまた単純さを強調して理解し易すく感じさせる点です。ポンラン楽団のリズム
リズムはどうでしょうか。自分は太鼓を練習した経験がないので、よく分からなかったんですが、やはりポンラン楽団の他の部分と同様、リズムも単純だと言われます。しかし、いつも聞いているからといっていざ太鼓を叩いてみると、どうやるのかさっぱり分からない、というような経験が何度か有ったので、今回は周りの人にちょっと聞いてみました。この機会にちょっとまとめてみます。まずクロンヤーオですが、叩き方の基本はコンガ等の西洋太鼓のような複雑さは無く、指をそろえて叩いてすぐ放す「ポーン」という音と、指を開いて叩いたらそのままホールドする「パッ」という音の2種類だけです。
そのリズムパターンですが、「4種類だけ覚えておけば良い」のだそうです。このさいだから、のリズムパターンをここにまとめておきます。通常は音程の異なる太鼓を4つ使いますが、ここではパターン化しやすいように一個だけで叩いた場合に単純化します。
図はまず自分が聞いた感じで一番特徴が分かりやすいスァーン(เซิ้ง)のリズムをクローンヤーオ一個だけで叩いた場合です。黒丸の音符が「ポーン」で×の音符が「パッ」です。口で言うと「ポーンポパッポンパッポンパッポン」という感じで、この小節を繰り返します。そういえばもう長いことパッポン行ってないです(無関係)。
クローントゥム(バスドラ)の方はこんな感じ。「ドーンドーンドンドンッッ」です。クローントゥムはオープン(叩いてすぐ放す)で叩くことはほとんどなく、基本的にはどの音も手のひらで強く叩いてそのままホールドするだけです。
二種類の太鼓を合わせるとこんな感じになります。上がクロンヤーオで下がクローントゥム。スァーンは太鼓音痴な自分でも非常に特徴がわかり易いですね。いかにも田舎の踊りにマッチしそうです。スァーンポンランに始まる多くのスタンダード曲で使われます。
こちらはトァーイ(เต้ย)のリズムです。同様に上がクロンヤーオで下がクローントゥムです。最後の音から数えると「ッポポンポンパッ ッポポンポンパッ」ですね。昔からあるケーンとモーラムだけのラムトァーイや、ケーン独奏のラーイトァーイ等、どれも古典としてはもっとも溜めのある強いリズムで、その感じが残っている気もします。トァーイタマダー、トァーイコーン、トァーイパマー等はポンランスタンダードの代表格なので聞く機会がもっとも多いんじゃないでしょうか。
プータイのリズム。上述したプータイ・サームパオ等で使います。もちろんポンラン楽団向けにアレンジされているので土地の音楽としてのプータイとは結構異なるかもしれませんが、そのリズムの特徴は残しているんじゃないでしょうか。
ポンラン楽団の太鼓のリズムは、これら4つの基本を覚えておけば良いということです。やはり単純と言って良いのかな?とは言え、やはり太鼓の練習経験が無い自分には覚えにくいんですが。
ところで上に挙げたのは各リズムパターンのポンラン楽団での一例ですが、楽団の形態が異なれば、やはり異なって来るようです。
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