イサーン音楽でよく出てくる言葉「プータイ」について、デイリー ルークトゥンでkomtaさんが言及していたのでちょっとまとめておきます。
プータイという語
プータイという語は ภูไท / ภูไทย / ผู้ไทย などと綴り、民族名としてのプータイと、その民族の音楽としてのプータイという二つの意味で使われる。代表的な辞書では ผู้ไทย となっているが、音楽分野や歌詞の中では ภูไท 又は ภูไทย と綴られることが多い。
民族としてのプータイ
現在はラオス北部やイサーン地方(ナコンパノム、カラシン、ムクダハン、サコンナコン、一部ウボンラーチャタニー、ウドンタニー、ルーイ、ロイエト等)に多く住む民族。
プータイ民族はかつてシップソーンヂュタイ (สิบสองจุไทย) やシップソーンパンナー (สิบสองปันนา) と呼ばれる地域(現在のラオス北部やベトナム)に住んでいた。 歴史の中にはプータイ民族の首領がビエンチャン王国の反乱を鎮圧するのに活躍し、ビエンチャンの王から娘を与えられて結婚し、生れた子供に地位を譲って当人は多くの地方都市を統治した、という話がある。その後プータイ民族はビエンチャン王国の南やサワンナケート等へと広がっていって数々の都市を作った。
やがてタイのラタナコーシンのラーマ3世の時代、ビエンチャン王国はタイと敵対してタイ軍に破れ、タイ王国の方針で、今後プータイやその他の民族をビエンチャンやベトナムに加勢させないように、メコン川のこちら側(現在イサーン地方)に移住させた。これがイサーン地方にプータイ民族が多くいる理由ということになるか。
その他詳細は以下のページで。
puthai (読みきれない)
文化庁のページ (読みにくい)
音楽分野でのプータイ
モーケーンの多くはケーンの独奏のアルバムを出すと、プータイという曲を録音している。人によってライヤイだったりライノイだったり、或いはその両方だったりするが、総じてゆったりとしたリズムでどれも一部に似た旋律が現れる。
ラムクローンもある。内容はもちろんプータイ民族の事柄。
ルークトゥンモーラムで題名にプータイが含まれる曲にも、やはり終始プータイのゆったりとしたリズムと旋律が現れる。
ちなみに自分が好きなのはピーイサーン (ปี่อีสาน) という笛が主旋律で、ケーンやピンがその伴奏をするもの。ずっしりとしたリズムでライヤイから入り、気分に応じてライノイに転じて盛り上げる、この伴奏をするのが自分は好きです。ピーイサーンは ピープータイ (ปี่ภูไท) とも呼ばれるので、まさに「プータイ民族の笛」ということもできる。
ポンラン楽団では有名なスタンダード曲のプータイ・サームパオ (ภูไท ๓ เผ่า) を頻繁に演奏します。「プータイ三民族」の意味で、プータイ・サコンナコン、プータイ・カラシン、プータイ・ナコンパノムのそれぞれの民族の旋律で構成されたセットで歌も少し入ります。
自分がナコンサワンやラーマ8橋で参加させてもらったポンラン楽団の名前は『หนุ่มภูลาว สาวภูไท จากกาฬสินธุ์』で、つまり「カラシンから来たラオの若者とプータイの乙女」という意味。この時にやったプータイ・サコンナコンは導入がダンサーの太鼓とケーンだけで、とても気持ちよかった。
というわけで「プータイ」は非常によく聞く言葉なのです。
6 comments:
詳しいภูไทに関しての記事、有り難う御座います。少しはモヤモヤしていたのがキレイになってきた様な。。。
タイの現在の歌謡モーラムとかでも、このภูไทという名称がある曲名が幾つか見つけられますが、興味深いのはラオスの歌謡モーラムには、曲名のほかにダンス名という事なんだと理解していましたが、このภูไทとか、その他諸々のその手も名称が出ています(この諸々に関してはまた報告しなければと思っているのですが。。)。以前、こちらで聞いたことにも関連しますが、この名称はダンス名なのかリズム名なのか。。はたまたという事でしたが、そのภูไทが民族名とすると、ダンス名とかそんな小さいモノではなく、その総体とも取れますね。例えば、ภูไท族というのは独自の言語も持っているとも考えられますが。。ภูไท族も、現在では普通にラオ語/イサーン語をも使っていて、歌の中でも同様にラオ語/イサーン語で歌われるようになるに連れて、音楽の方も変わってきていると言う事、なのかな。。その変わり目辺りに興味が向いて行きます。
そうですね、書き漏らしましたがプータイ独自の踊りもあります。ポンラン楽団のプータイ三種族では各プータイ族の踊りも見られます(自分はいつもあまりちゃんと見てないので忘れてました)。
以前ここに置いたラオスのモーケンのレクチャーの録音でも、「各地方の旋律の違いはつまり各民族の言語と文学の違いである」ということを強調していました。プータイにも独自の言語があるのでしょうね。
ただ現在のメジャーな市場に出る音楽では、マーナーな言語だとまったく受け入れられないので、全てイサーン語/ラオ語になってしまうんではないかと思いますが、なんてイサーン語さえ聞き取れない自分が言うのもナニですが(笑)。
よくスーパーとかでイサーンの楽器とかCD/VCDを並べて売っているの見かけますよね。以前、そこの人に聞いたんですが、「この音楽はモーラムか?」と。。すると、応えは「違う!」との事にえっ?となったんですが。。これ、どういうことか判りますか?
それとmuriさんが参加しているポンラン楽団にも、例の壷を並べた所で踊っている女性ダンサーは居ますか?あれって現在は型だけですよねぇ?しかし、昔はあれがベース音を出していたんでしょ?どうやって音を出していたのか判りますか?
イサーン楽器を並べて売っている所だとするとたぶんポンラン楽団とかケーンのCDじゃないでしょうか。モーラムはあまり置いていないと思います。たまに歌もありますが、モーラムの語りとは違いますし。
壷ダンサーですが、必ず居ます(笑)。たしか สาวไห (壷女ってそのまんま)とか呼んでいたと思いますが、もはやポンラン楽団のシンボルですね。おっしゃるとおり昔は壷の真中に弦が貼ってあるベースだったんですが、今は壷ダンサーの立ち位置の飾り道具です。ダンサーは終始壷の上で手をくねくねと躍らせるしぐさをしていますが、これは弦を弾いていた頃の名残です。
かつての実際にベースとして弾いている姿はは以下で見れると思います。
http://youtube.com/watch?v=M30keu_TZRc
そう言えば、2年位前のことかスワンルム・ナイト・バザールの一角(BecTeroHallの右裏辺り,普段は駐車場)でポンラン楽団(その時はその名称も知らなかった。。)の凄くいい演奏を見たことがあります。ダンサーも入れると総勢30人は居たんじゃないでしょうか。。確かOTOPの様な催しを同時にやっていた。。。で、壷ダンサーも勿論居たし、メインのダンサーのオネーサン達も居たし、そしてピンのお兄ちゃんのイナタイ・スタイルがカッコよかったんですが、いつまで経っても歌手が出てこなかったんで、?となったのを思い出しました。その時、カメラ持っていなくて、惜しい!と思った記憶が。。
そうですよね、普通ポンラン楽団なんて知らないですよねーと思ったけど、よく思い返してみると、自分も2年程前に自分でイサーン楽器をやりだすまでは知らなかったような気がします(笑)。やはり相当マイナーな分野ですよね。
スワンルム周辺で歌無しで30人ぐらいのポンラン楽団というと、自分の師匠達が出ていた可能性が大です。バンコクでは楽団自体そんなに多くないので。
プータイ語のことは全く知らなかったんですが、今回話題をふってもらった機会にWEBを漁ってみたので次の記事に入れました。思い返すとイサーン人の知り合いから「カラシンの言葉はさっぱりわからん、例えば~」というような話を聞いた事があって、今回「あー、あれはプータイ語のことだったのか」と納得したりしています。
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