まずは7月17日から21日まで滞在し、改めて一連のケーン作成過程を見学したので、復習を兼ねてその覚書を記録しておきます。
構成パーツ
- 竹管。種類はマイサーンだが、単にマーイと呼ぶ事が多い。
- リン。リードの事。原料は古銭を溶かして板状にしたもの。
- キースート。ヤニ、虫の巣から取れる。
- タオ、タオケーン。胴の部分。
- つる紐
竹管の準備
- 竹を選ぶ(選び方の法則はまだ不明)。
- 火で炙って曲がっている部分をまっすぐに伸ばす。
- 同時にまんべんなく黄色く色付けをする。
- 砂をつけた布で拭きとって綺麗にする。
- 注意: 焼き過ぎると焦げちゃって台無し。
- リン叩き
- 銀の板から1~2mm幅の棒状に切り出す。
- それを叩いて5mm幅ぐらいの平たい棒にする。
- コツ: 金槌には水を度々付ける、そうしないと早く柔らかくなりすぎる。まっすぐな板にするのは最初は至難の技。熟練者は叩く瞬間に金槌の頭をひねるが、これは非常に難しいので、 自分の叩き方の癖によってどう曲がるかを把握し、ひっくり返して対応する
- リン整形
- ノミで切れ目を入れてリンの真ん中を振動版の形に切り出す。
- 全体に削って薄くする。
- 竹ナイフで振動板のバリ取りしつつ、振動版を少しだけ枠から離す。
- 注意: 振動板を基盤から離し過ぎると台無し。
- 削って薄くするのとバリ取りを繰り返して充分な形にする。
- 首の部分は厚めに残す、特に低音用はりん叩きの段階で首を厚く残す。
- リンを竹に装着する
- 装着する為の平らな土台を作る。
- 振動板が位置する場所には細長い穴をあける。
- ナイフへの熟練が必要。
- コツ: 竹には細かい筋が有る、それに逆らわないように切り取る。
- ルーペー(音程調整穴)
- リンから離れた上側と下側にルーペーを開ける。原則は 1:3、リンの下側へのルーペーへの距離を1とすると、上側への距離は3になる。
- ルーペーの距離が離れれば低く、近づけば高くなる。
- 1オクターブ上の音ならそれぞれの距離は 1/2 となる。
- リン
- リンの根元を薄くすると低くなり、頭を薄くすると高くなる。
- リンを削って低くなったらルーペーへの距離を縮めて高くする、これを繰り返して充分な音にしてゆく。
- リンの状態が充分で管全体が充分に振動する音をเสียงเต็ม(満音とでも訳すか)と呼ぶ。
- 目的は満音で音の高低が一致した状態を作ること。
- 低音用リンはリン叩きの段階から特殊な形にする(首の部分が特に厚くなるように)。
- 満音状態になった後はルーペーのみでの調整になる。音が低ければ穴を広げてリンへの距離を縮める。高すぎたらキースートや竹で塞いで穴を小さくし、リンとの距離を広げることになる(やや面倒なのでこうならないようにしたい)。
- ベースとなる音はチューナーで正確に測る、その他はベースからの相対音、5度(4度)、例えばラとミ、ラとレなどで測る。
- 調音のコツ: 二つの音を比較する場合、片方の音を歪ませてから戻す事により、耳の判断を助ける。
- ナタで大まかな形に。
- ノミで繰り抜く。中の穴のサイズは使用する竹管に合わせる。
- 後は全てナイフで整形。
- 竹のヘラを上下に装着する。これが左右の竹管の仕切りになる。
- サンドペーパー、荒目、細かい目。
- ラッカーで仕上げ。
- 基本的に巣から取ってきて干すだけ。
- よく捏ねる。
- 一本づつキースートで固定していく。
- 片側の列を全て装着後、もう一方の列を装着。
指穴
- 穴は自分の手で位置決め、定規と鉛筆で線を引く、決まるまで何度かやり直す。
- 半田ごてで穴を開ける。
- リンとルーペーを微調整する。ほとんどはリンの調整のみ。
- 森で取ってきて干しておく。
- 使う前に数分間水に漬け、ナイフで削いで平たくする。物によっては白黒の綺麗な縞模様になる。
一連の行程を改めて見ると、指穴を開けるのに半田ごてを使う以外は一切電気を使わない、徹底したハンドメイド。そして材料も全て自然の産物というわけで驚きです。どの工程も時間が掛かり、注文が捌き切れないのも頷けます。次回訪問は10月の予定。
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