2012-02-09

ケーン作りの勉強-その3

ケーン作りの勉強、第3回目は年明けの2012年1月13日からの約10日間をロイエト県の先生の家で過ごす。今回は最も一般的なキーAmのケーンを作ることにした。

まずはリン打ち。リードとなる金属を叩いて板状にする。約2mm角ぐらいに切り出した金属棒をハンマーで叩いて、全体が0.2mm以下の板状にする(中高音域の場合)。要求される滑らか度は以前思っていたよりも厳しいようだ。まだまだ難しい。このリンの「厚みやしなやか度」については毎度悩む。どうも自分の指先の感度が足りないようだ。

そして竹の選択と切り出し、炙りと修正。火で炙る最中3本程割ってしまった。原因は焦がしたらいけないと思うあまり炙りが足りなかったため。炙りが充分かどうかは竹の色が微妙に変わるのを見る。見分けられないと足りなかったり炙り過ぎたりすることになる。

そしてリンのノミ入れ(板の真ん中を振動板の形に切り出すこと)、厚み調整、振動板と枠の間の隙間調整を行う。隙間調整は最終的なケーンの出来具合に大きく影響する。前回はこれが酷くて全く不十分な結果だったがそれで学習した。今回はだいぶマシにはなっていると思う。

写真は竹管にリンを装着する段階。

 そして調音。ここで重要なのが「満音状態にする」という事。リンの薄さとルーペー(管の上下の調音用の穴)を調整して、調音と共に、「少ない息で最も効率良く音が出て菅全体に響く状態」に持っていく事。これもまだ確信を持つには至っていない。

ところでリン打ちの後から装着まででリンの厚みは半分以上削られる。削り粉は捨ててるわけで、銀貨や銅貨から出来ている貴重な金属をだいぶ捨てている事になる。こりゃ勿体無い。でも忙しくて粉の回収なんてやっていられないらしい。

タオケーン(胸の部分)はひたすらナイフで削り出す。指に負担がかかるので指サックを作っていったのが役立ったが、用意したのは人差し指だけだったので今度は親指の皮が大変だった。次回は親指用も用意すべし。子供の頃からナイフを使って育つイサーン人は鍛えられていて平気なんだけど。

組立段階。ルーペーの位置を見て「あれ、一箇所間違えてる」と思った方は素質有り。

完成。と言っても組み上げるとあちこちの調音がずれるのが普通。ここで再調整を行う。竹管の隙間からルーペーを調整したり、管を引き出してリンをちょっと削ったりと、これがまた厄介。

結果としては「まだ不十分な点がいろいろ有るが、使えないこともない」という出来だった。それでも前回に比べればだいぶ進歩したと思うが、確信が持てない部分もまだまだ有る。とにかく測って数字が出る世界じゃ無いから感覚(指と耳と目の)を鍛えるしか無い、という事。

その他:

酷い近眼をカバーする為、このような体制で臨んだ。拡大鏡は非常に役立つ。

今回もたくさんの失敗をしたが、酷いのが貴重なリンの破壊。不注意で3個、そして調整ミスで更に3個を破壊。これにはあきられられた。


ここには顧客やら修理依頼やら学生の遠足やら、と毎日いろんな人達が来る。

右は大学生の遠足。学生はあれこれ触りたがったりするもんで「こら道具を動かすな、触るな」と思わず注意してしまった。これ大人でも有るんだけど、こういう事が黙々と作業する職人を苛立たせるようだ。「道具に触るなと看板貼ったら?」と言うと、「とは言え皆客だからなぁ…。」だそうで、悩ましい。

こちらはテリーミラー博士。1985年にケーンに関する本を書いた学者で、その本の存在は知っていた(読んでないけど)。そして30年近く経った今でも東南アジアの音楽を研究しているそうだ。博士はこの先生の師匠と親しかったそうで、その時のナイフがまだ使われている事に喜んでいた。


そんなわけで、今回もお世話になりました。

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