タイの一般の人には最も有名であろう盲目のモーケーン、ソムバット・チムラート先生(アーチャーン・ソムバット)に会えるということで、これは行かねばとラーマ8世橋の近くの川岸の公園へ向かう。
会場では身障者の為のイベントが行われていた。車椅子のジャーナリスト、クリッサナ氏やスキンヘッドのドイツ人コメンテータ等、いつもテレビで見慣れた顔ぶれとソムバット先生のトークショー。
もう一人の司会の西洋人もテレビでよく見る人だけど、その流暢なタイ語に驚いた。言葉の端々にジョークを交えて常に客を笑わせている。
ソムバット先生はケーンでいろんな音の音真似なんかを披露して、もはや芸人という感じ。最後はラーイ・ロットファイ(汽車)も披露して「あぁCDで聞いたのと同じー」と感心、あたりまえか。汽車の走り出す音はケーンを指先で叩く音だったんだなとか、細かいことだけど。
トークショーを終えたソムバット先生を、いきなりN先生が連れ出してきた。どうやら元々知り合いらしい。
N先生から指示されたので、恐れ多くもソムバット先生のスッサネンを本人の目の前で吹かせて頂きました。暴挙かなと思ったけれど、どうやら喜んで頂けた模様。「音は全部正しいよ、でも息がまだ正しくないね、それともっと速く」とアドバイスを頂く。今まで「速すぎ、もっとゆっくり」というアドバイスばかりもらっていたので「もっと速く」というアドバイスにはびっくりした。
こんど会いに来れば一対一で教えてやるよ、とのことなので、機会を見つけて会いに行ってみたい。
夜は別ステージに移動してソムバット先生と人気ルークトゥン歌手のピーサドァートの競演。他にもタイで活動する西洋人ブルースギタリスト(プロムポンのブルースバー『トーキョー・ジョーズ』で見たことある人)や日本から来た不可思議なバンドも演じていた。
ソムバット先生は盲目であることもあって、身障者の為のイベント等では度々目玉になる存在のようだ。
以前マハサラカムで会った、ソムバット先生に教えたことがあるという高齢のモーケーン、アーチャーン・ブアラーから聞いた、「ソムバット・チムラートは大衆演奏家である」という言葉を思い出した。演奏家は能力を高めていくと、どんどん高尚なものを求めて行き、やがて大衆が聞いてもその意味が分からない世界に行ってしまう。ソムバット・チムラートはその対極に居る。つまり大衆が理解できることをやり続けている大衆演奏家である、と自分は解釈している。
以前ここに紹介したソムバット先生のCD。
昔聞いた時は、好き放題に技巧を見せつけているように感じていたが、今改めて聞くと全く印象が違う。
むしろ基本に忠実で、付け加えた技巧的な部分は誰にでも理解できる分かりやすい味付け。かつての伝統的な奏法の豊かさ、芸術性とは対極に位置するかもしれないが、良い意味でも悪い意味でもこれが現代の大衆演奏家(モーケーン・プラチャーチョン)の演奏であると思う。
2 comments:
なんか人脈がスゴいことになりつつありませんか。
偶然凄い人に会ってますが、人脈というほど気軽に会える関係では無いですよー。
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